アンティークジュエリー物語n.15
ナチュラルメイクと
ジュエリーとお化粧

深い魅力を持つアンティークジュエリーやオブジェですが、身につける時には装いと共に、お化粧も気になりますね。
今回は、ジュエリーと同じ時代の女性達のメイクアップをご紹介致します。

ナナ エドワール・マネ作 1877年 ハンブルグ ハンブルグ美術館

太古からお化粧は女性にとっても、また男性にも、儀式や祭事では大切なことでした。古代エジプトのクレオパトラにネフェルティティ、神秘的な太古の女性達は、厳しい自然から肌を守る為に、オリーブオイルを塗り、青や黒、深緑のコールで目の周りを描いていました。
コールとは、鉱物や粘土を混ぜ合わせたアイラインで、炎症を防ぐ作用があります。
クレオパトラは目の回りをグリーンで、まぶたをブルーに染めるのがお気に入りだったそうです。
今でもアラブやエジプトだけでなく、フランスの化粧品にも化学薬品入りよりも安全なコール入りのアイラインがあります。

古代ローマ時代は、貴族にとってテルマエ(風呂)が大切で、風呂後にはエジプトやギリシャから引き継いだメイクアップに、長い時間をかけていました。

中世時代のローロッパでは、キリスト教の戒律が厳しく、お化粧は欲を生むとして悪とされ、とりわけ貴婦人達は、清楚な美が良いとされ、理想は絵に描かれた聖母マリアでした。


しかし、16世紀のルネサンス時代になりますと、「 美と官能 」が花開きます。
当時のイタリアでは、サフランとレモンを混ぜたものを塗り日焼けをさせて作った金髪と、明るい顔色が流行しました。
また、金髪にするためにビールで髪を洗ったりもしていました。
顔色を明るくする為には、鉛入りのクリームを薬剤師に作らせます。その上に、オリエントの国から輸入した植物紅をさしました。


鉛入りのクリーム、今では危険なものですが、長い間、ヨーロッパの人々に取って白い肌のために使われていました。
日本でも芸者さんが「 鉛のおしろい 」を使い、皆から中毒で死んでしまうと言われても「白さ」のために使い続けていたそうです。
さて、そんなお化粧の先駆者イタリアから「 カトリーヌ・ド・メディシス 」が16世紀、フランスのアンリ2世王へ輿入れします。


王妃はイタリアからフランス宮廷へ、化粧品や香水を持ち込みました。
特に香水は非常に尊ばれ、それまでフランスには香水は存在しませんでしたので、これ以降、フランスの香水文化が花開いたのです。
カトリーヌ王妃は専属の薬剤師をかかえ、毒薬まで作らせたと伝えられています。
上の画像は晩年の王妃、口さがない人々には不美人と噂されましたが、肌と手のとても美しい人で、知的で気品のある女性だったそうです。
中世の戒律厳しい時代を過ごしたフランスの貴婦人達は、カトリーヌ王妃の持ち込んだ化粧品に夢中になり、お化粧を凝らします。


そんな貴婦人達の中で、最も魅力的だったのが上の女性、アンリ2世王の愛妾「ディアーヌ・ド・ポワティエ」です。
当時流行の明るい肌色や、ほんのりと赤みのある頬と口元と、控えめなお化粧は、今のメイクアップの冊子に出ていても自然ですね。

18世紀に入りますと、男性も女性も髪粉をふりかけ、顔はより白く、口元や頬はより赤く、と大変エスカレートしましたが、


フランス革命の後、1800年頃には、ジョゼフィーヌ皇后にみられるように、 古代ローマ風の、磁器のような肌色に、自然な赤みをさしたようなお化粧にに戻ります。
19世紀には、貴族やブルジョワの女性達は自然派、クルチザンヌや女優達は白粉の派手な18世紀風、と別れていました。

桟敷 オーギュスト・ルノワール 1874年 ロンドン クートルドギャラリー

しかしながら19世紀末の社交界では、女優やクルチザンヌ風がはやり、上流階級の女性達も濃いお化粧に凝りました。
そのような中で、唯一帝政ロシアのアレクサンドラ皇后だけは、白粉をつけない顔で社交界に現れました。
当時の慣習であった白粉なしのお化粧は、はじめは人々を驚かせましたが、その自然な美しさが評判になり流行します。


元来美しい人ですが、白粉無しで肌色を生かし、口紅やほお紅をすっきりとさせた肖像画からも、生き生きとした雰囲気が伝わって来る魅力的な女性です。
ロシア革命で散った最後の花、アレクサンドラ皇后は、健康的なナチュラル・メイクの先駆者でもあったのですね。

20世紀になりますと、ココ・シャネルが流行らせた、日焼けは、夏の社交界のシンボルとなり、ブロンズ肌の信仰は、いまでもヨーロッパの女性達の間で続いています。


このように、洋の東西を問わずメイクアップの方法はさまざまで、アンティークジュエリーに合わせるお化粧は、身につける人の個性がより際立つもの、皆様はどのようなメイクアップがお好きでしょうか。

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