アンティークジュエリー物語n.26
秋から冬へ
ブローチの楽しみ

コラム n.14 では「ブローチの楽しみ 〜 春から夏へ 〜」をお届け致しましたが、今回は「秋から冬へ」といにしえから現代のヨーロッパの女性達のブローチの着けこなしをご紹介致します。
ブローチ好きな方ならご存知の通り、アンティークのブローチには凝った細工や素材、宝石やデザインなどアンティークジュエリーならではの魅力が沢山詰まっています。

アール・デコ時代のブローチを中央へ留めて

大きさも形も様々で、あらゆるデザインのブローチがありますし、寒い季節は厚手の装いになり、ますますブローチをつけることが楽しくなってきますね。
さりげなくシンプルな装いへ、あるいは30年代の女性のように、冬ならではのファーや帽子に合わせて、ブローチそのものを引き立たせる着け方も素敵ですし、

1930年代 パリ

この華やかな女性のように、羽根の刺繍にとけ込ませるように、まるでブラウスの飾りの一つのようにつけるのもアイデアです。


さて、ここで大変なブローチ好きであったオートクチュリエ(高級注文服のファッションデザイナー)をご紹介致します。

この女性は「エルザ・スキャパレリ」、1890年ローマ生まれ、母方はイタリア貴族で、子供の頃から芸術文化に囲まれて育ち、1925年にブティックを開きます。
その才能は、当時の偉大なクチュリエであったポール・ポワレに見いだされました。


装いだけでなく、芸術文化への興味が大きく、さまざまな斬新なデザインで評判を呼び、ウィンザー公爵夫人をはじめ、各界の貴婦人や女優に好かれました。
エルザ自身もお洒落で、当時の画像からもジュエリーを存分に楽しんでいる様子が伺えます。


特に好きだったのがブローチ、クラシカルに中央へとめたり、上の画像のようにクリップブローチを使い、襟元へ輝きをつけています。
あるいは、30~40年代ならではのボリュームのあるブレスレットに、華奢な1900年初期、ベル・エポックのブローチを着けて、エルザの作るドレスのように、遊び心がある着け方で楽しんでいたのが見てとれます。


エルザの時代が終わった1960年代、アメリカ大統領夫人のジャックリーヌ・ケネディもブローチ好きでした。こちらは当時らしいトップに、襟元へブローチでポイントを着けた装いで、今でも参考になる身につけ方ですね。


そして次には、現代のアンティークジュエリーコレクターの一人の、ブローチの装いです。
イタリアの有名なデザイナーですが、シンプルなワンピースの襟元へ、花の形でしょうか、金のブローチをとめ、カーディガンをさらっと羽織った装いは、日常にも素敵です。


お洒落に帽子やコートの襟元へ留められる方もいらっしゃいますし、スカーフをブローチへ通して使う方法もあります。
他には、宝石の色にあわせてコーディネイトしたり、お客様の中には、動物のモティーフのブローチを、葉模様のワンピースに合わせ、まるで動物が森の中にいるように、アンティークジュエリーで物語を紡いでおられた様子は、大変素敵でした。

ブローチの数だけ装いはあり、千差万別の楽しみ方ができるのが、アンティークジュエリーの魅力一つでもあるのですね。

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