N°1406 カルネ・ド・バル – 舞踏会の手帖
19世紀前中期のフランスの「カルネ・ド・バル」をご紹介いたします。
「カルネ・ド・バル」とはフランス語で「舞踏会の手帖」のことです。
舞踏会での貴婦人の持ち物で、中にセットしたリングで連ねた装着式の紙や象牙のカードへ、ダンスを申し込む相手の名前を書きました。
舞踏会では、付属の指輪を着け、チェーンでつないでいる手帖を持ちます。

このカルネ・ド・バルは18金製で、縦55mm、幅40mm、厚み7.5mmのサイズ、表裏や側面全体にロココ様式の文様を彫金細工でつけてあり、指輪には明るいブルーのサファイアをセットしています。
指輪の正面は、縦7mm幅です。

表面には、ロイヤルブルーのギヨシェ・エマイユと、中央の銀フレームにはダイヤモンドの「S」のモノグラム装飾があります。

10倍に拡大しても細やかな彫金は美しいいまま、19世紀の宝飾彫金師の精緻な仕事がわかります。
ロココ様式の花や葉、葡萄、月桂樹の枝の紋様が見られます。
ロココ様式は、18世紀のヴェルサイユ宮殿での、植物紋や曲線のデザインが主流のブルボン王朝の装飾様式です。
王朝はフランス革命で閉じましたが、19世紀の前中期に、ふたたびフランスが王政となり、宮廷文化として18世紀のロココ様式が取り入れられました。
手帖は蝶番式で、一見わからないほど、バーがきっちりとセットしてある緻密な蝶番の仕上げとなっています。

指輪は組紐状の18金製チェーンで繋いであり、明るいブルーサファイアをセットした指輪は、植物紋の透かしをつけた18金彫金です。
手帖の側面には18金製の、芯を入れる形式の筆記具が上下のリングに通しセットしてあり、表面にギヨシェの彫金があります。

「ギヨシェ」とはフランス語で、宝飾品や小物の貴金属の面につける線彫刻のジオメトリック(幾何学)模様のことです。
模様は、ストレート、カーブ、放射、波、同心円などで、細かい彫り紋様に光が複雑に反射し輝きます。
彫りのためザラつきがあるのではと思いますが、ギヨシェは非常に細かい彫金のため、この筆記具も、触れるとその滑らかさに驚きます、
内部は緑の絹地張りで、フレーム中央上下に、フランス語でカルトンと呼ぶ厚めの紙をセットする輪があります。

参考として、こちらは19世紀のカルネ・ド・バルですが、このようにカルトンをセットしていました。

「ギヨシェ」に、透けるエマイユ(エナメル・七宝)をかけたものが、この手帖の表面を飾っているギヨシェ・エマイユです。
特にこのギヨシェは、四葉型のフレームに合わせ、波状と放射状を組み合わせた、高度な技術が必要なギヨシェ紋様で、曲線が特徴のロココ様式とハーモニーを奏でています。

ギィヨシェ・エマイユの上へのダイヤモンドのモノグラムのセッティングは、エマイユが破損しやすく大変難しい宝飾技術のため、当時でも質の高い宝飾工房だけが可能な技術でした。
この装飾からも、宮廷の王侯貴族クラスの貴婦人の持ち物であったことがわかります。

見事な彫金細工、ギヨシェ・エマイユ、ダイヤモンドのモノグラム、サファイアの指輪と全てが揃った貴婦人のためのカルネ・ド・バルは、飾るのも楽しい舞踏会のアンティークオブジェです。
◯ ギヨシェ・エマイユ_エナメル_七宝
「ギヨシェ・エマイユ」とは、金属の土台に細かい文様を浅く線刻した上に、色付きの透明エマイユ(エナメル)を施す技法。
文様は直線、放射状、同心円、波型などの幾何学模様が基本で、いくつかを組み合わせる場合もある。
エナメルから下の彫金文様が透けて見え、モアレ織物のように光を反射して輝き、特にさまざまな文様があるのはアンティークジュエリーならではの技法である。
◯ ロココ様式
「ロココ」はフランス発祥で、フランス語の貝殻を意味する「ロカイユ」から派生した言葉で、1700年代前半のルイ15世王時代の繊細で優美、明るく洒脱で自由、親しみやすい美しさの様式である。ロココ文化の中心人物はルイ15世の寵妾で、優れた才能と美的感覚があったポンパドゥール侯爵夫人であった。夫人は貴族の生まれではなかったが、子供時代から英才教育を受け、天性の美しさからルイ15世に見出され、文学、哲学、美術、音楽を愛し、学者や芸術家を招いた学芸サロンを開いた。
当時は花の世紀と呼ばれ、貿易によってオリエントから珍しい植物が入り、フランス庭園に咲き乱れ、オランジェリー(温室)が作られた。セーヴル工房やリヨン絹織物工房を保護し、花々からインスピレーションを受けたポンパドゥール好みの磁器やファッションがヨーロッパ宮廷で流行した。この時代のジュエリーには、優雅なリボンや花をモティーフにしたものが多く「ジャルディネッティ」と呼ぶ花籠型の指輪やブローチが見られる。また、ミニアチュールや絵画エマイユを使い、ダイヤモンドなどの宝石で飾ったペンダントやブローチ、指輪が好まれた。
フランス 19世紀前中期
素材:エマイユ・ダイヤモンド・サファイア・18金・銀
サイズ:L5.5cm W4.0cm D0.75cm
リング:L0.7cm
リングサイズ:13
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France, Early to Mid-19th Century
Materials: Enamel, Diamonds, Sapphire, 18K Gold, Silver
Size: L5.5cm W4.0cm D0.75cm
Ring: L0.7cm
Ring Size: 13
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