アンティークジュエリー物語n.44
スペインの情熱
バレンシアガ I

フランス詩人のジャン・コクトーに「 若くして既に成熟 」といわしめた天才デザイナー “ バレンシアガ ” をご紹介致します。
1895年スペインのバスク地方に生まれ、1930年代に起きたスペイン内戦のため、パリへ逃れて来ました。


スペインで既にキャリアを始めていた彼は、パリの中心、ジョルジュ・サンク通りへブティックを開き、構築的なデザインで「ファッション界の建築家」と呼ばれています。


スペイン人らしい情熱的な感覚と、芸術を服へ表した人で、スペイン生まれの芸術家達の作品を、インスピレーションにしているものが印象的です。

例えば上の「ミロ」の絵や、ピカソやベラスケスなどを好み、スペイン人という彼のアイデンティティで、フランスとは違った新しい感覚の装いを提案し、黒を中心にした重厚なファッションで、パリの人々をとりこにしました。


そんなバレンシアガの有名な作品がこちら、バルーンのようなふんわりした黒のドレスです。


このドレスに着けているジュエリーは、ダイヤモンドのイヤリングとブローチで、丸い花のような、教会のステンドグラスの薔薇窓のような、ブローチが黒のドレスに映えています。

黒は教会の色、
バレンシアガは ” 修道女の黒と白 ” や ” 司祭のマント “ などにインスピレーションを得ていました。


上の黒とは逆の白では、この花嫁のドレスが知られています。


17世紀のスペインの画家 ” ベラスケス “ が描いた王女像から、ウエディングドレスが作られました。
花嫁は、細長いダイヤモンドのペンダントを着けています。
17世紀の重厚なバロック様式を感じさせる、荘厳な白のドレスに、1900~20年代の大きめのモダンなペンダントを合わせ、コントラストをつけた装いが魅力的です。
白と黒、簡単な様で難しい2つの色を、バレンシアガ風に仕上げた逸品といえるコーディネーションです。

さて、続いてバレンシアガのもう一つの代表作が下のドレスで、これはかの有名な ” ピカソ ” の絵からイメージされています。


白と黒の幾何学的な感じで、ジュエリーは、首に添ったボリュームのあるネックレスを一つだけ、シンプルに着けています。


これは夜会用のドレスですが、現代の装いにもこのアイデアを拝借できそうです。
例えばすっきりとした黒のセーターやトップとスカートに、首元だけに装飾的なネックレスを着ける、などと。
バレンシアガか活躍した1940年代から60年代は、社交界が華やかだった時代で、このような夜会用ドレスが作られ、着る人も場所もありました。現代とはまた違った世界でしたが、当時の素晴らしいクリエーションから、今の装いをイメージするのも興味深いと思えます。

続いて次のn.45ではより詳しく、バレンシアガとジュエリーの関係をご紹介してまいります。

◁ n.45 装いに合わせて バレンシアガ I   n.43 パリの1931年 ▷

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