アンティークジュエリー物語n.64
どうして私は...?
ヘレナ・ルビンスタイン II

前回のn.63 ヘレナ・ルビンスタイン I ー 美のアヴァンチュール に続き、世界的な化粧品メーカーの創始者で、ジュエリーコレクターであった女性をご紹介致します。

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さて「どうして私はジュエリーを愛するのか?」を88歳で書いたヘレナ、前半では、子供時代の祖母のプレゼントの真珠のネックレスの思い出から、仕事へのパッション、そしてコレクションへと、彼女の前半生をご紹介しました。

ヘレナ・ルビンスタイン
還暦のヘレナ 1932年 エドワード・モリヌー作のドレスで

ここからは、ヘレナのエッセイ、「どうして私はジュエリーを愛するのか?」から、ジュエリー小話や、憧れたパリの女性の話を交えながら、ヘレナ独特のコーディネイトをご覧いただきましょう。

28歳のヘレナ・ルビンスタイン

「・・・・・私が一番素敵だと思ったのは、パリで会ったマドモアゼル・シャネルのジュエリーの着け方だったの。
30年間モード界に君臨している彼女のシンボルジュエリーは、パールとゴールドチェーンにラフにカットしたエメラルドのネックレスや、大きなカボションカットのブローチで、とても素敵だったわ。

ココ・シャネル
所有のジュエリーを着けたココ・シャネル

夜に小さなパリのレストランで、劇場で、アートギャラリーで見かけるマドモアゼル・シャネルは、ちょっと控えめな感じだけれど、ジュエリーをどんな風に着けたらシックか知っていて・・・例えばある日、いつものシンプルな黒の装いに、ジュエリーは一つだけ。でもそれがなんとも言えない素敵な着け方!もうスペクタクルを見るよう!

ココ・シャネル 自宅で

それはクリップブローチのアンティークジュエリーで、エメラルドとダイヤモンドがセットしてあるんです。
マドモアゼル・シャネルはそれをある時はシニヨンの髪留めに、ある時はチョーカーみたいにチェーンで首へ、ある時は深いVカットの谷間へ留めて・・・・・いつもと同じジュエリーなのに、スタイルに合わせて違うジュエリーに見える着け方をしているの。エレガントに見えるし、何より彼女の個性がきわだって、憧れだったわ。

20代後半のヘレナ・ルビンスタイン

私はといえば、 ” パラドックス 〜逆説  ”  的なことが好き。
もし私が背の高い女性だったら、小さな小さなジュエリーを着けるし、または服をシンプルに、装飾的なジュエリーをといった風に、しっかりとコントラストをつける感じかしら。

40代のヘレナ・ルビンスタイン

私は髪をぴったりと撫で付けたシニヨンにして、ネックレスとイヤリングを装いに合わせて着けるのが好き。そして男社会の中で働く女性にとっては、印象的でエレガント、そして強い個性を持つことが大切だと思うの。
私のシンボルは、常にエレガントな真珠、色の綺麗なエメラルドやルビー、神秘的なキャッツアイ、輝きのダイヤモンド。これらを組み合わせたジュエリーが好き。

中央がヘレナ、姉妹と一緒に

例えば指輪では、真ん中にダイヤモンド、周囲をピンク色の真珠と極小のルビーで取り巻いたものなど、色の遊びがあるのが好みです。そして指輪はいつも見ていられるから楽しいわ。
ただ、左右の手に一つづつの指輪はOK、でも絶対に一つの手に2つの指輪は着けない、これが私のルールなの。

ヘレナのリング・コレクション

他にはトルコ石とアメジストの組み合わせも素敵。名の知られたジュエラーはもちろん素晴らしい作品を作っているし、でも、サインピースが現れる以前の、古い時代のアンティークジュエリーも好き。作りや石の選び方、今にはない美しいデザインが魅力的だと思いませんか?

イヴ・サンローランのオートクチュールドレスのヘレナ90歳  1962年

ジュエリーが素敵なのは、肌に直接つけるアートだから!
いつも見ていられるし、着ける方も見る方も楽しめる「小さな小さな芸術」だと思うの。
ネックレスやペンダント、イヤリングは顔が輝いて明るく素敵に見えるし、指輪やブレスレットは手をエレガントに見せてくれる。” ジュエリーは女の子の一番の親友 “ とは良く言ったもの。女性の個性を最も輝かせてくれると思うのです・・・・・」

ヘレナとアフリカのマスク・コレクション
ヘレナとアフリカのマスク・コレクション

ヘレナ・ルビンスタインのエッセイ、「どうして私はジュエリーを愛するのか?」からは、ジュエリーへの愛だけでなく、人生観や女性としての矜持までがわかるように思えます。
19世紀末から20世紀にかけて、まだまだ女性が仕事をしていくには難しかった時代に、航路で世界を渡ったヘレナ、

ピカソ作タペストリーとヘレナ

ポーランドからオーストラリアへ、そこで真珠に出会い、その後インド洋を超えてヨーロッパへ、途中でサファイアやルビー、エメラルドと言った色の宝石に出会い、パリでシャネルにシックとは何か?を学び、ニューヨークでアートを愛し、個性的なスタイルを打ち立てたヘレナは、世紀を超えた先駆者の一人でしょう。

スペインの現代芸術家ダリと話すヘレナ71歳 ニューヨークで

たくさんの芸術家の作品を買って支援し、アフリカのマスクや古代のガラス、モダンアートのコレクターなどアートコレクションの世界でも現代の先駆けのスタイルを作りました。
今に残る画像からは、強い個性と自身に溢れた姿が見て取れますが、見えないところでたくさんの努力をした人だと感じられます。

ヘレナ・ルビンスタイン 79歳 1951年

数億年をかけて、地球が作り出した宝石、生物から作られる真珠…子供の頃、祖母から初めて贈られた真珠のネックレス以来、ヘレナの愛したジュエリーは彼女の歴史であり、人生という航路を無事に渡るためのお守りであったのかもしれません。

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