アンティークジュエリー物語n.63
美のアヴァンチュール
ヘレナ・ルビンスタイン I

ヘレナ・ルビンスタインと聞くと、ほとんどの方はデパートの化粧品売り場を思われるのではないでしょうか。
中には商品を使っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、この化粧品メーカーの創始者「ヘレナ・ルビンスタイン」とアンティークジュエリーの関係を2回にわたってご紹介してまいります。

◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆

アメリカの有名な女優エリザベス・テーラーと写っている右の帽子の女性が「ヘレナ・ルビンスタイン」、この時なんと80歳、ヘレナの輝きはエリザベス・テーラーに負けていません。

ヘレナ・ルビンスタインとエリザベス・テーラー

ヘレナは1870年生まれ、なんと19世紀の人なのです。
ポーランドのユダヤ人で、ゲットーの貧しい香辛料店の家庭に生まれ、8人姉妹と育ちました。
14歳で学業を終え、父の店で働き始めましたが、大家族の口減らしのため、そしてたくさんの求婚も断って22歳で叔父夫妻の毛皮店で働き始め、1896年、26歳でオーストラリアの叔父の店で働くために、船出しました。
この時、ヘレナはユダヤ名「チャージャ・ルビンスタイン」から「ヘレナ・ルビンスタイン」に改名しました。

中央のヘレナと母、姉妹たちとポーランドで 19世紀末

到着したのはメルボルンから330km離れた場所、その叔父の店で働き始めたところ、ヘレナの肌の綺麗さがお客の間で評判になります。
このことがヘレナの転機になりました。

ポーランドを出るときに母が持たせてくれた手作りクリーム、そのおかげでヘレナの肌は、オーストラリアの砂漠地帯の乾燥に耐えたのです。
ヘレナは同じクリームを作って販売することを決めました。
すぐに叔父の店を辞め、大都市メルボルンへ、茶店で働きながら、最初のクリーム「ヴァラーゼ」を作ります。

20代のヘレナ・ルビンスタイン

30歳の時、メルボルンでエステティックサロンを立ち上げ、クリーム「ヴァラーゼ」によって成功し、夫とも出会いました。
その後はヨーロッパへ、パリにもサロンを開き、第一次大戦のためにアメリカへ、そして現在のヘレナ・ルビンスタインに至っています。

創業当初のパッケージ

さて、どうしてアンティークジュエリーが化粧品と関係があるのでしょうか?
それは、ヘレナ・ルビンスタインは稀に見るジュエリーコレクターであったからです。

女性として初めてアフリカンアートに着目し、絵画や彫刻などのあらゆるアートコレクターとしても有名ですが、ヘレナが何より愛したのはジュエリーでした。
コレクションにはモダン、アンティークに関わらず好きなテイストのものを集めています。
1958年、ヘレナが88歳のときに書いたエッセイ「どうして私はジュエリーを愛するのか?」の前半をご紹介したいと思います。

「私のジュエリーへの愛は、小さな子供の頃に、すでに始まっていました。
ある日祖母が、どんな風に海の貝の中で真珠ができるのかを話しながら、小さな小さな真珠のネックレスをプレゼントしてくれました。
私はその時、綺麗な照りと、創造の神秘に魅せられたのです。
そのショックは今も記憶に残っていて、美しい真珠や宝石を見るたびに、その時の心の高ぶりがよみがえってくるくらいです。

真珠のネックレスを着けたヘレナ・ルビンスタイン

メルボルンで仕事を始めて、ちょっとお金ができた時、1粒の真珠を自分で買いました。
そのあと、お給料が出るたびに、淡水、海水、色やサイズを問わず、買えるものを1珠づつ増やしていきました。
私のサロンが成功するにしたがって、いろんな出自の真珠の集まりを連ねたネックレスが出来上がりました。
それは今でも私の首を取り巻いています。
こんな風に、まぜこぜの真珠のネックレスを着けたのは、世界で私が初めてではないかしら・・・・・

仕事がとてもうまくいって、ある日、パリやロンドンでもっと仕事をするために、メルボルンから船出しました。
途中で立ち寄ったセイロンで出会ったのは、エメラルド、サファイア、そしてルビーでした。
私にとっては新しい世界、素晴らしく輝く美しい色の世界でした。こんな風にして、私は宝石のコレクターとなったのです。
何年もかけて集めたジュエリーコレクション、どれも着けて今も魅惑されています・・・・・・」

88歳にしてジュエリーへのパッションを語るヘレナ・ルビンスタイン、
ジュエリーは彼女に素晴らしいパワーを与えていたのですね。

ヘレナはパリの名だたるクチュリエ、ポール・ポワレ、バレンシアガ、ジバンシー、サンローラン、シャネルなどの顧客でもあり、ジュエリーとコーディネートした写真も残っています。
次回のコラムでは、「どうして私はジュエリーを愛するのか?」の後半にある、ヘレナの友人たちのシンボリックなジュエリーの話や、コーディネイトをご紹介したいと思います。
次回のニュースレターにて予定していますので、どうぞ楽しみにお待ち下さい。

▷ n.62 マリアノ・フォルチュニ

◁ n.64 ヘレナ・ルビンスタイン II どうして私はジュエリーを愛するのか?

ページの先頭へ