アンティークジュエリー物語n.18
海からの贈り物
真珠のネックレス

当サイトでご紹介のジュエリーには、真珠が使われたものが多くございます。
殆どが天然真珠で、ブローチやネックレス、指輪にカフスボタンなどさまざまなジュエリーやオブジェに飾られています。
天然真珠は、貝により偶然に作られるもの、長い時間をかけて層が重なり、艶やかな美しい真珠ができあがります。
青い海で育まれる宝石は、まさに ” 海からの贈り物 ” といえるでしょう。

湯浴みの女神ディアナ 1742年 フランソワ・ブーシェ作 パリ・ルーブル美術館

太古から天然真珠は珍重され、美のシンボルとして神々に捧げ、装飾品を飾って来ました。
古代の貴人達は、粉にして飲むと、不老不死と永遠の美を授かると信じ、遺跡から発掘された真珠は、今でも輝きを失うこと無く息づいています。


いにしえから天然真珠は稀少で、限られた人々のみのもの、皇帝や妃、王侯貴族達のジュエリーでした。

歴代の王妃達の中でも特に真珠好きで知られたのは、16世紀フランスのアンリ2世王妃、カトリーヌ・ド・メディシス、婚礼衣装のために世界中の天然真珠を集め、ドレス一面に真珠を縫い付けました。
そのため、その後しばらくは、真珠が宝飾界から消えてしまったと言われていたほどです。

カトリーヌ・ド・メディシス王妃 ジェルマン・ルマニエール作 1547−59年頃  フィレンツェ ピッティ宮殿蔵

王妃のドレスの真珠にはいまだかつて無かったと言われる特別に大きな天然真珠がありました。
この真珠の行方も気になりますが、後日にご紹介を差し上げますので、楽しみにお待ち下さい。
さて、人々は錬金術と同じように、真珠を作ることを夢見て、古くは中国や地中海でもわずかながら行われていたようです。
しかしながら真珠の歴史を変えたのは日本の養殖真珠で、19世紀末期〜20世紀初期にヨーロッパへ渡り、一斉を風靡します。


もともと、ヨーロッパでは天然真珠の美を愛でていましたから、天然真珠にできるだけ近い色艶の珠が選ばれました。
当時の養殖真珠は、天然真珠が基準になっていますので、時間と手間をかけ作られた、厚い層と深い艶が魅力で、独特の美しさを持っています。


ここにご紹介している女性達は1920年代のパリジェンヌ、画像からは天然真珠と養殖真珠の区別はつきませんが、首にぴったりと添うチョーカー、ソートワールと言えるほど長いロングネックレス、何重にも巻いたブレスレット、一連でシンプルに、金のチェーンと一緒に、と、さまざまな着けこなしており、フランスの女性達の真珠好きが伝わってくるようです。


特に好まれたのはグラデーション、小さな粒から大きな粒へ、流れるようなネックレスです。
色は、まるで薔薇の花びらの上の雫のように艶やかに光る天然真珠のような色が好まれました。

ただ、養殖真珠が登場したこの時代でも、天然真珠の稀少さは変わらず、王侯貴族や富豪達は、至高の一粒を、指輪やブローチ、ペンダントに飾り貴婦人の首を飾るネックレスは、ごく僅かな人々しか手に入れることが出来ないものでした。


しかしながら、初期の養殖真珠の魅力は、天然真珠に見まがう色艶にあり、時間をかけて作られた珠は、100年を経ても艶やかで美しいものです。

今では養殖真珠でさえも、海の汚染や時間短縮などで、より難しくなっているという現実がありますが、当時の養殖真珠は、清らかな海と美しい珠を作るという人々の情熱から生まれました。

海から生まれた天然真珠の夢見るような色艶、それに魅せられた、人の手で作られた養殖真珠、共に、真珠の深い魅力を物語っています。

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