アンティークジュエリー物語n.72
シネマ@アンティーク
ネモ銀行

観るだけでいろんな世界へ連れて行ってくれる映画、皆様はどんな映画がお好きでしょうか?
このシネマ@アンティークでは、映画の中のアンティークジュエリーをご覧になってみて下さい。

フランス映画「ネモ銀行」は1934年作。実際にあった、世間と政府を大きく揺るがせた銀行事件が元になった半フィクションの映画で、会計係と銀行総裁、その愛人の駆け引きをコメディタッチで仕上げています。
アンティークジュエリーをお好きな方へ、この映画の魅力は、愛人シャルロット役の女優モナ・ゴヤが、たった一つのブローチを、バリエーション豊かに着けていることです。どうぞ下の画像からお楽しみ下さい。

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時は1928年、アール・デコ時代( ※ 下方参照 )のフランスで、黒っぽいスーツに幾何学形のカフスボタンの銀行員の映像から物語が始まります。

この女性はシャルロット、シンプルな黒のV襟ワンピースの胸元には、プラチナフレームに全面にダイヤモンドをセットした、横長のブローチが光っています。映画では、このダイヤモンドブローチを、変幻自在に着けこなしていきます。

拡大して見ますと、あら、リボンの結び目に着けているのですね。黒にアンティークのダイヤモンドジュエリーは、王道の着け方です。シックですが華やかさがあり、大人の女性に似合います。

お次のバイカラーのロングドレスでは、クルーネックの中央へ。

黒いスカーフを捻ったような飾りはなんでしょうか?
よく見ますと、絹コード編みのチョーカーに、下がるボウをつけた飾り襟のよう。シャルロットはボウの真ん中へ、ダイヤモンドブローチを着けています。

襟がアクセントになって素敵ですね。
続いては、同じドレスにケープを羽織ったアンサンブルの装いです。さてブローチはどこでしょう?

ガラスのテーブルには「ラリック」の花瓶が…

こちらでは、ケープの襟の下位置へ斜めに着けています。中央に着けるより、よりエレガントな雰囲気に変わりました。

別の日には、なんとベレー帽へ!ダイヤモンドブローチの下には黒いリボンでひと工夫、
ベレー帽は淡色ですが、ブローチの部分だけ黒が背景になり、ダイヤモンドの輝きが引き立っています。

このアイデア、例えばカーディガンやジャケットの合わせ位置やトップの襟元になどにも使えそうですし、リボンが厚みを作るので、しっかりと留められるのも良いですね。

お次はブラウスへ、クルーネックの中央に留めていますが、

淡色の装いに合わせたダイヤモンドジュエリーは、黒の装いからガラリと変わり、可愛らしい雰囲気に、

優しいダイヤモンドの光がさりげなく、昼間の装いにぴったりです。

さて、ご紹介しただけでも既に5種類の着けこなしをしているシャルロット、服の色と着ける位置で、一つのジュエリーのイメージがずいぶん変わることが分かりました。

横長のアール・デコ時代のダイヤモンドブローチは、プラチナの透かし細工に大小のダイヤモンドをセットしているデザインが多く、平行に、縦に、斜めと360度、方向を変えて着けられます。
すでにお持ちの方も、これからお求めになりたい方も、シャルロットのように、バリエーション豊かに装えるのが魅力ですし、デザインによっては男性にも似合うアンティークジュエリーです。

ルーヴルアンティークでも好んでご紹介するアール・デコのブローチ、これからも素敵なアンティークジュエリーをご紹介をしてまいりますので、 どうぞ ブローチカタログ をご覧下さい。

最後に、フレンチジェントルマンの装いでお終いに致します。

これからもシネマ@アンティークでは、いにしえのお洒落をご紹介してまいります。どうぞ次回も楽しみにお待ち下さい。

◯ ネモ銀行
監督:マルゲリット・ヴィエル
フランス 1934年公開

◯ アール・デコ_後期アール・デコ
1920_1930_1940
「アール・デコ」とはフランス語の「アール・デコラティフ 〜装飾美術」の略語で、第一次世界大戦後の1910年代末頃から1920年代を中心に1930~40年代初期の装飾様式、アート・ムーヴメントをさす。立方体、方形、円、三角形などの幾何学型デザインが主流で、当時の前衛芸術(アヴァンギャルド)であった。建築から始まりインテリアデザイン、グラフィックデザイン、オブジェ、ジュエリーへと広がった。インターナショナルスタイルとして、フランスのパリ、アメリカのニューヨークを中心に、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、アジアまで広がった。有名なアール・デコ建築としては、パリのシャンゼリゼ劇場、ニューヨークのクライスラービルがある。モダニズム(現代性)の先駆けの装飾様式であるが、他の文化の借り物ではなく、ヨーロッパが古代ギリシャ時代から長い時間をかけて作り上げた黄金比を代表する数学や美的感性を土台にした上で作られ、現代の目で見てもなお完成された美の装飾様式である。

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