アンティークジュエリー物語n.56
アンティック・リヴァイヴァル
古代への旅

ヨーロッパ、特にフランス、イギリス、イタリアでは、18世紀から19世紀にかけてローマを中心に古代遺跡の発掘が盛んに行われました。


そこには建築、装飾、壁画、モザイク、ジュエリー・・・が発見され、人々は熱狂し、王室や美術館、個人のコレクションへとオブジェが集められます。


その中でも19世紀の美術様式に大きな影響を与えた「アンティック・リヴァイヴァル」はジュエラーたちに創作へのインスピレーションを与えました。
中でも「カステラーニ」は古代の美術様式に大きな影響を受け、当時の宝飾技法をリヴァイヴァルさせました。


遺跡のジュエリーは大変細かい金細工が多く、技術は長い間忘れ去られていましたが、再発見と研究が行われ、アケオロジカル・スタイル(古代様式)のジュエリーが創作されました。

N.0604 エメラルドのインタリオ ユノー像 ブローチ

このような遺跡の発掘を背景にしたジュエリーは、アンティークジュエリーがお好きな方なら必ず目にしていらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは興味深い古代の金細工技法について、ご紹介してまいります。

まずは「フィリグリー」、チェーンのネックレスやフレームなどに使ってある透かしのある細工です。
繊細な透かし文様が綺麗で、アンティークジュエリーならではの魅力ですね。
この技法は、金属の細い線を基盤の金属面、例えばフレームなどにロウ付けし、文様を作り上げます。
金属線は、縄目状に巻き上げたり彫りで文様をつけることが多く、見た目にとても繊細な感じです。


基盤になるフレームや土台を用意せず、金属線のみで作るオープンワークもできます。
フィリグリーの語源「フィル」とはフランス語で「糸」のことで、まさにレースのようなジュエリーである所以です。

次は「カンティーユ」、こちらも語源はフランス語の「カンヌ」です。
「カンヌ」とはフランス語で「藤」のことで藤細工のように金属線をらせん状に巻いてモティーフを作リ、ジュエリーの土台へロウ付けします。


上は大変珍しいカンティーユ技法のロングネックレスで、
中には数百個のモティーフがつけられたジュエリーもあり、まさに職人技と言えるでしょう。
モティーフは中心がありその周囲をらせん状に巻いているため、花の形に見えるものが多く、古代のロマンティックな雰囲気があります。

そしてもう一つは「グラニュレーション」


これは金属の土台へ、けし粒ほどの小さな珠を文様に添って、ロウ付けで敷き詰めていく技法です。

この技法は特に紀元前のエトルリアの発掘品に多く見られ、エトルリアが滅亡後は、古代ローマへ引き継がれましたが、ローマ滅亡後はその技法は長い間忘れ去られていました。
19世紀後半に、発掘品に大きな影響を受けたカステラーニがこの技法の復活を試みました。

しかし遺跡のジュエリーに施してあった粒の最小サイズは0.18mmと言われ、古代の粒サイズの復元には大変な時間がかかります。
日本では「粒金細工」と呼ばれます。


大きく分けて上の3つの技術が古代遺跡のジュエリーに見られ、宝飾メゾンを熱狂させました。
技法は1000年以上の時を超えていますが、今も新鮮で美しい技法を使ったジュエリーは、身につけると古代へ旅するような感覚があり、まさに永遠のジュエリーと言えるでしょう。細かい細工のおかげで表面の控えめで落ち着いた煌めきも魅力の一つになっています。

画像のジュエリーはカタログでご覧いただけます、詳細はお問い合わせ下さい。

◁ n.57 マテリアルの手帖 金            n.55 タマラ・ド・レンピッカ ▷

ページの先頭へ