N°0263 ヴェネツィア 貴婦人の肖像/アンティークカメオリング 

珍しい石層へカメオ彫刻されたアンティークジュエリーをご紹介致します。
カメオは1500年代後期から1600年代初期のイタリア、おそらくヴェネツィアで作られたもので、当時の貴婦人の肖像です。
このカメオの希少なことの一つは、アゲートとジャスパーが同じ石層に存在している石を使っていることです。
カメオの背景は赤褐色のジャスパー層、肖像は乳白色から橙色、煉瓦色へのグラデーションのアゲート層で、ジャスパーより艶やかな質感があり、色層を生かして巧みに彫ってある、色彩と艶感のコントラストが印象的なカメオです。

このカメオの貴婦人は、1500年代後期から1600年代初期にイタリアの貴婦人の髪型や装いをしています。
カメオをより知るために、当時のイタリアの装いについて少しお話ししてみたいと思います。

まず、カメオの髪は煉瓦色層ですが、これは当時ヴェネツィア発でイタリアの貴婦人に流行した「ヴェネツィア・ブロンド」という銅のような色で、編み込んだりカールさせたりしていました。
下の絵がヴェネツィア・スタイルの髪型で、これはヴェネツィア派の画家ティツィアーノ作、1500年代中頃のイタリア貴族のゴンザーガ家令嬢ジュリアの肖像です。

ジュリア・ゴンザーガの肖像 ティツィアーノ画 16世紀中期
ジュリア・ゴンザーガの肖像 ティツィアーノ画 16世紀中期

 

当時のヴェネツィアは、14世紀から始まった東洋の国々との貿易で流通する品々の影響を受け、オリエント風を取り入れた装いしていました。
ヴェネツィア総督「ドージュ」の伴侶で「ドギャレス」と呼ばれた女性は、他国の王妃と同じ待遇を受ける人物で、このカメオの女性のように、宝石で飾ったティアラや、絹織物と金銀細工の帽子を付け、編み込んで結った髪をしていました。

もともとヴェネツィアの女性は黒に近い髪色ですが、北国の金髪に大変な憧れがあり、上層階級の女性達は、髪を陽に当て植物染料で染め、それが「ヴェネツィア・ブロンド」呼ばれて、オリエント風の装いとともにイタリア宮廷で流行しました。

このカメオでは、丸い帽子とティアラを着けていますが、同じく、下のヴェネツィア派の画家ティツィアーノ作の「イザベラ・デステの肖像」も編み込み結った髪の上からオリエント風の帽子を被っています。

イザベラ・デステ ティツィアーノ画 1536-1537年 ウィーン美術館蔵
イザベラ・デステ ティツィアーノ画 1536-1537年 ウィーン美術館蔵

 

当時の絵からもわかるように、このカメオはヨーロッパとオリエントの中継地点「ヴェネツィア」の装束です。

当時は、神話の人物や神々は別にして、このようなカメオ彫りや絵に描かれる現実の人間は、当時でもごくわずかな貴族階級の人々だけでした。
その上表立つことも少なかった女性は非常に稀だったので、このカメオは貴族階級の女性、または上に書いたヴェネツィア総督の「ドージュ」の伴侶で「ドギャレス」と考えられます。

シャンクは19世紀初期、ナポレオン1世皇帝時代にフランスで作られたもので、古典様式のシンプルで綺麗なラインの18金製です。

石は数億年の時をかけて地球が作り出した天然の産物で、このジャスパーとアゲートの2つの石が絡み合った石層は、自然の驚異と言える珍しい石です。
それを彫刻家が美しい肖像へ仕上げたカメオは、人知と自然が見事に重なり合った証といえますでしょう。

煉瓦色から橙と艶やかな乳白色の石の赤みのある色彩は、身につけますと肌色を艶やかに見せますし、カメオと黄金のフレームの組み合わせは、華やか過ぎずシックな美しさがあるアンティークジュエリーです。

最後に、このカメオの時代に重なる、現在も多くの謎を含んだ「ペルシア風帽子の女性像」をご紹介致します。
これは、イタリアの画家パルミジャーノ作の1530年代の絵で、長年、美術史家が研究しているにもかかわらず、この女性が誰なのか全くわかっていません。

ペルシア風帽子の夫人 パルミジャーノ画 1530年代 パルマ国立美術館蔵

 

ルネサンス時代、女性像は芸術家にインスピレーションを与えるシンボルとして描かれることがありましたので、この絵でも、頭に詩のシンボルの「ペガサス」の飾りをつけていることから「詩のシンボル像」と言われたり、あるいは実在の女性詩人ヴェロニカ・ガンバラでは?という説もあります。
また他には、どこか他の宮廷の貴婦人という説も有力です。

と言いますのも、画家はイタリアやヨーロッパ中の宮廷へ招かれ、肖像画を描いており、特にイタリアは、当時はミラノ公国、ヴェネツィア共和国、パルマ公国、ローマ教皇領…といくつもの国に別れており、他国に比べて宮廷の女性たちは高い教育を受け、本を書き、詩を作り、政治にも参加するほどの位置にいました。

画家や彫刻家は、他国にはなかなか居なかった賢く美意識の高い貴婦人達に、たくさんのインスピレーションを受け、崇拝と憧れの対象としていたからです。
そんな貴婦人達の肖像画を描くことは、画家にとって名誉なことでした。
パルマ公国の詩人のヴェロニカ・ガンバラも、作家や詩人を先祖に持ち、高い教育を受けた貴婦人の一人でした。

また、豪華な衣装とターバンのようなペルシア風帽子は、ヴェネツィア、ミラノ、パルマといった北イタリアのルネサンス時代の宮廷ドレスの特徴で、オリエントとヨーロッパの文化の美しい混成が感じられます。

カメオ:イタリア  16世紀後期−17世紀初期
リング:フランス 19世紀初期
素材:アゲートとジャスパー2石層・18金
サイズ:L1.8cm W1.2cm
リングサイズ:16-16.5
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Ring
Cameo: Italy  Late 16th century-early 17th century
Ring: France Early 19th century
Material: Agate and Jasper two stone layers, 18K gold
Size: L1.8cm W1.2cm
Ring size: 16-16.5
Price : Please contact us ▽

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