アンティークジュエリー物語n.80
つぎ当ての
英国王

世界でお洒落な男性は?

と聞かれたら、必ず登場するのが2022年に英国王となったチャールズ3世、というのはご存知の方も多いのではないでしょうか。

1948年11月14日生まれの74歳、母はエリザベス女王、父はもとギリシャ兼デンマーク王子のエディンバラ公フィリップ殿下です。

(18歳 皇太子時代)

古き良きイングランドの伝統のエスプリを携え、スポーツとガーデニングが大好きという、まさに英国紳士的な人物というのは知られたところです。

あつらえのスーツを400着持ち、それに合わせて靴も揃えていますが、それは外交や式典に出席する立場として必然のことかもしれません。

しかしチャールズ国王の他と違うところ、それは50年前に作った服や靴を、今も身につけていること、そして「チャールズ・パッチ」付であることです。

さて、「チャールズ・パッチ」とは?

(田園スタイル / 20代と50代、同じツィードコートで)

ある新聞でチャールズ国王は、

「私は簡単にものを捨てるのを嫌う人間ですから…」

と話していますが、専属の手入れ係がいるとしても、50年も経つと擦り切れそうですね?

そのとおり、
チャールズ国王は、擦り切れたところへパッチ(つぎ当て)をして着ており、それが「チャールズ・パッチ」と呼ばれています。

左手をポケットへ入れるので傷むのか、そこへパッチしたスーツや、20代に作った革靴の、薄くなったところへ革パッチをして今も履いているのが知られています。

チャールズ国王のこの行いは、最近よく耳にする「サステナブル(持続可能なこと=環境への配慮につながる)」であるとして、今あらためて注目されています。

「何が流行ろうと、自分自身は変わらないが、25年周期でベストドレッサー賞をもらうんだよ。」

というチャールズ国王の言葉からも、好きなものを着るという一貫したスタイルが感じられますね。

私有地で有機農業を営み、ウェイトローズ・ダッチー・オーガニックの名で1992年からチャリティー食品の販売をするなど、食や環境問題にも力を注いでいる国王、

そんな活動もあり、ものを修理しながら大切に使い続けるのは、チャールズ国王にとっては自然なことなのでしょう。

さすが注目されるだけあって、さりげなく凝ったVゾーンが素敵ですね。

装いに合わせたカフスボタンは、19世紀のもの。

良いものを長く、というチャールズ国王の考えに添うと、アンティークジュエリーやオブジェも「サステナブル」ではないでしょうか。
なぜなら素材の源泉は自然ですし、良いものほど時代を超えて大切にされてきたのですから。

さて、こちらはチャールズ国王の祖父「ジョージ6世」、1924年の肖像ですが、100年以上前とは思えないモダンさです。

(ジョージ6世 在位1936-1954年)

祖父譲りのチャールズ国王の装いや姿勢は、今も、100年後も、支持され続けるのでしょう。

実は女性よりも、時間と、原材料からして費用がかかると言われる男性の装いは、本当に奥が深いですね。
当店へもそんな方々にお越しいただいており、いずれご紹介できればと思います。

n.79 普段着のアンティークジュエリー

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