アンティークジュエリー辞典 技法

ルーヴルアンティークでお取り扱いをしているアンティークジュエリーとオブジェの「技法と細工」についてご案内をしています。
アンティークジュエリーとオブジェをもっと詳しく知るために、このページ最下方もご覧ください。

アンティークジュエリー辞典

技法・細工

◯ フィリグリー
「フィリグリー」とは、宝飾師により、主に金や銀などの貴金属を糸のように細く作った線状のものを、コイル状に巻き上げたり、縄編み状や粒彫金を施し、それらを溶接して作りあげる宝飾技法。
フレームを土台に様々な文様を作る、土台を使わず線だけで透かし文様(オープンワーク)を作る場合もある。宝飾師がミリ以下の単位の線から作る細工は、機械では不可能な、レース編みのような細やかさがある。元来この技法は、古代遺跡から発掘された古代ギリシャやローマ時代の宝飾品に使われていた細工で、19世紀の宝飾師の研究により復刻された技法でもある。

◯ カンティーユ
「カンティーユ cannetille」はフランス語で、源泉は「カンヌ」という籐細工を指す。金属の細い線をカットしてろう付けし、糸で刺繍をするように、巻き型装飾を付ける宝飾技術である。ろう付けを重ね、金モール飾りのような立体的な装飾も可能である。フィリグリー細工をより立体的に仕上げたものとも言える。

◯ グラニュレーション
金属の台座に非常に小さい粒状、球状のものをろう付けする技法で、パターンに合わせて文様的に装飾をつける。日本では「粒金」と言われる。古代のエトルリアの金細工が遺跡から発掘され、19世紀にローマのジュエラー「カステラーニ」などによって技法が研究され、古代のものは0.18mmほどのサイズがあり、完全な復元とはなっていないが、近しい細工を作ることが可能となった。古代当時の技法は完全には解明されていない。

◯ ギヨシェ・エマイユ_エナメル_七宝
「ギヨシェ」とは、金属の土台に細かい文様を浅く線刻した上に、色付きの透明エマイユ(エナメル)を施す技法。
文様は直線、放射状、同心円、波型などの幾何学模様が基本で、いくつかを組み合わせる場合もある。
エナメルから下の彫金文様が透けて見え、モアレ織物のように光を反射して輝き、特にさまざまな文様があるのはアンティークジュエリーならではの技法である。

◯ エマイユ・シャンルヴェ_エナメル_七宝
土台となる金属を彫金し、凹凸をつけ、凹へ、凸の金属と同じ高さになるまで何度もエマイユ焼成をし、その上で表面の研磨を重ね、凹凸が同じ高さになるよう仕上げるエマイユ技法。彫刻のパターンによって、様々な文様を金属とエマイユで描いたように仕上がり、エマイユの色彩も単色から多色、透明から不透明まで様々なテクニックを使えるため、見た目に凝ったデザインが出来上がる。フランス語では「エマイユ・シャンルヴェ」、英語では「シャンルヴェ・エナメル」、日本では「生地彫り七宝」と呼ばれる。

◯ クロワゾネ・エマイユ_エナメル_七宝
エマイユ(エナメル_七宝)技術の一つで、金属の土台に、別に作った金属線を文様やデザインに合わせてろう付けし、フレームを作り、その中に彩色エマイユを施して焼成し作り上げる方法。
エマイユの色彩の間には、模様に添って表面に金属線の縁取りが見えている。古くは古代ローマ時代からこの技法が見られ、ビザンティン帝国や、中世ヨーロッパの工芸品にもある。古中国や日本などの東洋の工芸品にも同様のエマイユ技法があり、日本では「有線七宝」と言われる。日本では特に明治時代に技術が発達しヨーロッパへ壺などの工芸品が輸入されジャポニズムのインスピレーションの源泉となっている。

◯ プリカジュール・エマイユ_エナメル_七宝
土台に金属を使わずに、カットした金属板やフレームの内側へ半透明のエマイユを施して焼成する七宝技法の一つ。日本では「省胎七宝」と呼ばれており、光を通すステンドグラスのような仕上がりになる。「プリカジュール」とはフランス語で「光を通す」意味であり、フランス語の宝飾用語である。小さなフレームサイズの場合は、台座を用いないで仕上げるが、大きなフレームの場合は、台座の代わりに雲母を使い焼成後に取り外す、または金箔を裏張りし焼成後に取り外すといった技術を用いる。小さなミスやエマイユの膨張、温度差や量などで焼成する際に簡単に破損するため、非常に高度な技術と経験が必要なエマイユ技法である。15世紀頃のイタリア、ルネサンス時代に完成した七宝技法である。

◯ 彩色エマイユ_ペインティッド・エナメル_絵画エマイユ_七宝
平らな金属の台座表面へ白のエマイユをベースにし、その上へ筆で置きながら、多色で絵や文様を作り焼成して装飾をつけるエマイユ技法の一つ。色によって焼成温度が違うため、焼成と研磨を繰り返しながら仕上げる。クロワゾネエマイユやエマイユ・シャンルヴェのように輪郭が無く、非常に高度な技術が必要であったが、仕上がりは絵画のように繊細で緻密、色のグラデーションや半透明エマイユを組み合わせた描画もあるため「絵画エマイユ」と呼ばれる。
彩色エマイユ技法は、15世紀中頃にヴェネツィアで始まったと伝わっており、その後15世紀末頃に、すでにシャンルヴェ・エマイユの技術で有名であったフランス中部のリモージュの工房が技法を完成し、16世紀から17世紀にかけて、祭壇画、聖具、額入り七宝絵、飾り絵皿、宝石箱などが作られた。多色に加え、金彩や半透明エマイユを組み合わせた華麗なリモージュ作品は評判となり、ヨーロッパ中の王侯貴族や高位聖職者から注文を受け、ルーヴル美術館で現在保存している作品には、当時の著名なリモージュ工房製がある。18世紀には、フランスへ旅したイギリス国王ウィリアム3世やアン女王が好んだことからイギリスやウィーンで流行し、フランスから作品を輸入、またはフランス出身の技術者がロンドンやスイスで工房を持ち注文に応じ作られ、当時の作品は現在ナショナルギャラリーに保存されている。アンティークジュエリーやオブジェにある彩色エマイユは、小さく緻密な美しさが魅力の作品が見られる。

◯ リモージュ・エマイユ_エナメル_七宝
フランスの中部リモージュのエマイユ工房作品をさす。中世にシャンルヴェ・エマイユの技法で始まり、12世紀には、キリスト教会のための十字架、祭壇用の装飾、聖具、装飾品や宝物箱を作り、スウェーデン、スペイン、イタリアで展覧会を行い、デザインや色彩が美しい優れた作品としてヨーロッパ中で大きな成功を収めた。14世紀は百年戦争のために制作が減ったが、15世紀末には、彩色エマイユ(ペインティッド・エナメル)技法を完成させたことで、よりバラエティ豊かで見事な作品を作るようになる。台座に白いエマイユを置き、その上へ彩色エマイユを施したリモージュ彩色エマイユは、ヨーロッパ各国の王侯貴族や高位聖職者に大きな評判をとった。16世紀には金銀細工工房とコラボレーションし、お互いの技術を生かしながら装飾品を作り、16世紀末、リモージュの著名な工房は非常な成功に沸いた。また、教会の聖具にくわえ、フランス国王や貴族たちが宮廷を飾る装飾品を注文した。その技術は17世紀から19世紀へ、フランスだけでなくスイス、イギリスなど各国へ引き継がれ、オブジェやジュエリーへ表されている。

◯ エマイユ・トランスパラン_トランスパラント・エナメル_トランスルーセント・エナメル_七宝
透明、または半透明のエマイユをさす。フランス語ではどちらも「エマイユ・トランスパラン」、英語では「トランスパラント=透明」「トランスルーセント=半透明」と呼ぶ。

◯ マット・エナメル_エマイユ_七宝
エマイユの表面へ艶消し(マット)加工を施したものをさす。

◯ ミニアチュール
アンティークジュエリー物語 n.4 芸術の花 ミニアチュール I
アンティークジュエリー物語 n.5 作家ラファイエット夫人 ミニアチュール II

◯ グリザイユ
グリザイユとはフランス語でモノトーンを意味し、白から黒、灰色のグラデーションや茶系のセピアトーンを使うモノクローム画法をさす。油絵や銅版画のための下絵やデッサンがあり、装飾や美的効果を高めるためも使った。装飾としては、壁画やエマイユやステンドグラス、ミニアチュール、写本に見られ、ルネサンス時代の芸術家は、古代のレリーフをモティーフにする時には石の彫刻的な感じを出すためにグリザイユ画法を使っている。モノトーンで陰影を出す画法は、落ち着いた深みのある美しさが好まれ、ルネサンス時代から19世紀にかけて美術や装飾品に用いた。

◯ カメオ・アビエ_装飾カメオ
カメオへの装飾をつける細工。カメオへ宝石や貴金属で作った髪飾り、イヤリング、ネックレスなどのジュエリーや衣装をセットする。「アビエ」はフランス語で「服を着た・正装した・飾った」を意味する。フランスでは「カメ・アビィエ」と言う。

◯ マイクロ彫刻_ミクロ彫刻
非常に微細な彫刻作品をさす。

◯ ア・ジュール
フランス語で「陽光を通す」を意味し、台座になる貴金属の裏側や側面へ、透かしや孔開けをする技法。台座にセッティングする宝石が、より輝くように光を通すための細工。英語では「オープンワーク、オープン・マウント、オープンセッティング」と言い、同じ効果のための技法用語である。

◯ マイクロ・モザイク_ミクロ・モザイク
古代ローマ時代に建築の壁や床を飾ったモザイク技法を使い、ジュエリーやオブジェのために縮小して作ったマイクロ(極小の)モザイク細工のこと。ローマンモザイクとフローレンスモザイクがあり、図柄は、ポンペイ遺跡のモザイクや、ビザンティン建築の壁面モザイクからインスピレーションを受けたものや、モザイク工房によるアーティスティックな創作品がある。

◯ ローマン・モザイク
ローマで作られるモザイクガラスを使ったマイクロモザイク技法。

◯ フローレンスモザイク_フロレンティン・モザイク
フィレンツェで作られるハードストーンを使ったマイクロモザイク技法。

◯ フロスティッド加工_フロスト仕上げ
フロストは英語で「霧」を意味し、ロッククリスタルなどの透明の石の表面へ艶消し加工を施し、霧がかかったように仕上げる加工。

◯ 彫金_イングレイヴィング_メタル・エングレーヴィング
金属やハードストーンを削る、穴を開けるなどして彫刻で装飾をつける技法。象嵌技法も彫金の一種である。立体彫刻の場合は、フランス語でスカルプチュール、英語でスカルプチュアリングと言う。ヨーロッパとテクニックは同じで、日本語で代表的な技法は以下。
・ 浮き彫り_レリーフ:平面に浅い彫りを施す技法。
・ 線彫り:線技法。
・ 鏨彫り(たがねほり):「たがね」とは金属や石を加工するための鋼鉄製工具。金属表面に凹凸を施す、切断など地金を彫ることに使い、刃と反対側の部分をハンマーで打つ。刃はさまざまな形があり、彫金文様をつけたり、表面変化をつける。
・ 透かし彫り:地金を宝飾用糸鋸(イトノコ)でカットし透かして図、文様を彫る技法。英語でオープンワークと言う。
・ 丸彫り_打ち出し:塊状を360度全ての角度から彫り、像や装飾を全方向から見ることのできる立体的な三次元で彫り出すこと、またはその彫刻品。

◯ 象嵌
地金の表面に凹面を作り、他の金属で作った材料をはめ込み装飾をつける陰刻による装飾技法。線状、平板状、モティーフ状などをはめ込む、時金に線刻をつけ、その凹面へ金属を打ち込んではめ込む方法がある。

○ ニエロ niello_素材_細工_技法
ニエロとは銀、銅、鉛などからなる硫化金属で、一般に黒金と言われる合金のこと、またはそれを使った象嵌細工を指す。
金属の表面へ彫り込んだ(エングレービング)模様の部分へ、黒色合金の粉末を塗布し、焼成して表面を研磨して仕上げる。
紀元前15世記頃の古代エジプトや地中海のミケーネ文明の時代に遡る古い金工技法。
地金に黒い模様が美的に映えるため、古代ローマ時代や古代ペルシャ、ルネサンス時代のイタリアの銀器などの古来の作品や、19世紀以降のロシアやフランスの宝飾品や工芸細工にみられる。

◯ ピケ_ピクェ
ピケ(ピクェ)とはフランス語で「小さな点を突く」を意味し、べっ甲の表へ金や銀のごく小さな粒状のモティーフを象嵌する装飾細工。

◯ 鋳造(ちゅうぞう)
金属を溶かして鋳型に流し込み冷やして形を作る技法。完成品は鋳造品、鋳物(いもの)という。

◯ ろう付け
2つの金属を溶かしてお互いに接合する技法。接合のためのろう材は、接合する金属の融点よりも低い融点の材質を用いる。はんだ付けとも言う。

レティキュレーション アヴェンチュリン・グラス  カボションカット(宝石)イリュズィオン・セッティング インヴィジヴル・マウント インヴィジブリー・セット ミステリーセッティング オープンワーク オープン・マウント カット・スティール カリブレ・カット クッション(シェイプト)カット クローズド・セット

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